クリスティーンさんの新しい恋人グッチ
その34.

マミーは久しぶりにクリステーンさんから手紙を貰った。

それは、こんな話だった。
クリステーンさんが自分の娘さんの所に遊びに行くと、孫達が犬が欲しいと言
うのでクリスマスにパグという犬を娘さんが買ったんだ。
でも、子供達は、犬は欲しかったけれど、世話はしたくないから、そのパグは
小さな檻の中で6ヶ月も飼われて、その檻の中でウンチもシーシーもしていて
、凄く臭くて汚いんだって。
クリステーンさんはビックリして、すぐに檻の中を掃除して、パグを外に出す
と、ずっと檻の中に居たから、グルグル廻るだけで、真っ直ぐ歩けない。
小さな檻の中に6ヶ月も閉じ込められていたから、小さな円をグルグル回る事
しか出来ないんだって。
クリステーンさんは激怒して、犬は生き物なの、お人形じゃないから、ウンチ
もシーシーもするの。それが出来ないのなら、犬は飼ってはいけない!と言っ
て、そのパグを連れて帰って来てしまったんだって。

クリステーンさんは新しいアパートに移っていて、以前のようにペットの事で
ビクビクする事はないから、息子や嫁なんかクソ食らえとパグの救出を強行し
たんだ。
息子さんもクリステーンさんがずっと犬なし生活で、毎日麻雀ばかりしていて、
体の事も心臓の事も心配していたので、文句を言わずにそのパグを飼う事を許
してくれたんだって。犬の名前はグッチ。写真も同封してあった。

でも、続きがあるんだ。
クリステーンさんはグッチを引き取ってから、昔のリオやハッピーやラッキー
たちとの生活を思い出し、凄く幸せな気持ちになり、グッチが大好きになった
んだ。
グッチも生まれてからずっと、誰にも可愛がられず、檻の中で無視され続けて
いたから、クリステーンさんとの生活は天国みたいになっていったんだ。
クリステーンさんはどこに行くのもグッチを連れて行き、離れられなくなって
しまった。

そして、クリステーンさんはグッチを連れて、お兄さんの所に遊びに行ったん
だ。
お兄さんも犬好きで大きなロットワイラーを飼っていたんだけれど、皆で、ラ
ンチをしている時に、グッチとロットワイラーは遊び始めたんだ。
ただ、問題はグッチは小さすぎて、ロットワイラーの激しい遊び方に付いて行
けなかった。突然、ギャオーンというグッチの叫び声が聞こえて、家中の人達
が庭に出て見ると、ロットワイラーの歯がグッチの右目に刺さってしまってい
たんだ。

ロットワイラーは大人しくて、グッチと楽しく遊んでいたから、決して、悪気
があって噛み付いたのではない、遊んでいる間の事故だったんだ。
ロットワイラーも自分が噛んでしまった事を後悔していたのか、どうしていい
かわからず、ウロウロしているし、皆呆然としてしてしまった。
クリステーンさんが駆け寄るとグッチは大量の血を流して、ウーン、ウーンと
唸っているんだって。それから、獣医さんに走り、大手術をした。

右目は摘出する事になった。潰れてしまっていたんだ。
クリステーンさんは手術代を9000香港ドル払ったんだ。
事故だったし、相手がお兄さんの犬じゃ、文句も言えない。
でも、この事故で今度はグッチは片目になってしまったので遠近感がなくなり
、歩き方もフラフラになってしまった。
けれど、益々、グッチが愛しくて、愛しくて仕方がないという手紙だったんだ。

毎回の事だけれど、クリステーンさんの犬の話は波乱万丈だ。
今度はグッチと幸せになるといいなあとマミーは思った。
                                           
つづく(次号掲載は5月31日を予定しています