その57.
それから、マリエッタさんはマミーと良く、お茶を飲みながらお喋りするよう
になったよ。
家に遊びに来てくれた時は、キッチンのテーブルの下で僕もチチもマリエッタ
さんの話を聞いている。
マリエッタさんは色々な人達が僕ら犬やネコと遭遇したミラクルな話をしてく
れるんだ。
初めはネコのシュガーのお話だ。
シュガーはやっぱり凄い虐待にあってシェルターに入ったネコだった。
でも、ヘレンさんとリックさんという夫婦に引き取られてとってもハッピーに
暮らしていたんだ。
ヘレンさんは糖尿病から色々な病気が出て、殆ど家から出ないで、ベッドの中
に一日中いる生活をしていた。
足も悪いので一階のリビングルームにベッドも置いていた。
その日はリックさんも食中毒を起して、ベッドの横に置いてあるソファーで寝
ていたんだって。
いつもシュガーは大人しくて、ヘレンさんの横に一緒に寝ているか、リックさ
んの側で寝ているかなのに、その日は様子がおかしくて、玄関ドアーの前でミ
ャーミャーってずっと泣きつづけていた。
ヘレンさんはそんなシュガーははじめて見たので、もしかすると、外に出たい
のかとドアーの所まで、杖で体を支えて、行って、ドアーを開けて
「はい、シュガー、外に出ていいのよ」
と言ったけれど、シュガーは一歩外に出て振り返り、ヘレンさんを見て、また、
家の中に戻ったんだ。
ヘレンさんはシュガーがどうしたいのかさっぱり判らなくて、ベッドに戻ると、
また、ミャーミャーとシュガーが泣き出した。
全く、一体どうしたいの?と重い丸太のような足を引きずって、ドアまで行く
と、シュガーがガリガリとドアをかきむしる。
ドアーを開けても、ヘレンさんの顔をじーっと見上げて、何か伝えたいらしい。
ヘレンさんはもしかすると、一緒に外に行こうとシュガーが言っているのかと
思い
「OK,シュガー、どこに行きたいの?」
とシュガーの後を付いて外に出たんだ。
シュガーはそのまま、大急ぎで、家の横に廻り、地面を掘り出した。
「どうしたの?シュガー」
犬じゃないからネコが地面を必死で掘っているのは変だよね。
ヘレンはシュガーが何を掘っているのか見たくて、近づくと、ムッとガスの臭
いがした。
大変だ。ガスがどこからか漏れている。
ヘレンさんは直ぐに家に戻って、ガス会社に電話してガスの臭いがするとリポ
ートした。
ガス会社の人がすっ飛んできて、家の横にあるメーターの所で検査したけれど、
何の異常もなかったんだ。
「ヘレンさん、異常なしですよ。漏れていないですよ」
でも、ヘレンさんはシュガーが地面を掘って居たことを話して、そこも調べて
下さいとガス会社の人に頼んだ。
ガス会社の人は半信半疑で検査の機械をシュガーが掘っていた地面に近づける
と、凄いガスが出ていた。
ガス会社の人の顔は真っ青になって、
「大変だ。これはガス管が破れて居るのかも知れません。ヘレンさん、すぐに
旦那さんと家から避難してください。それから、近所の人達にも知らせて下さ
い。僕はこれから本部に連絡します。これは大変だ」
何とシュガーが穴を掘っていた場所には大きなガス管が通っていて、そこが破
れていたんだって。
そのまま、どんどんガスが漏れて、何かで引火したら、その辺の家は皆吹っ飛
んでしまっていた位、大変な事だったんだ。
ヘレンさんはシュガーが命を助けてくれたんだって信じている。
ネコのシュガーがガス漏れを察知してここ掘れ、ニャオニャオとその場所まで
教えてくれたんだからね。ミラクルだ。
つづく(次号掲載は11月15日を予定しています)
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