その56.

そんなお喋りをしている内に、僕のシッターさんのハイデさんの話になり、マ
リエッタさんもお友達で、ハイデさんが引越しを取りやめた話をしてくれた。
そもそも、ハイデさんが引っ越しをしようと思った原因は近所のグラウチィな
年寄り達だったらしいけれど、特に隣りのバーさんはハイデさんの家の窓から
中を覗いて、何匹ネコがいるの何匹犬がいるのとマネージメントオフィスにリ
ポートして文句を言ったんだそうだ。
もちろん、ここにはルールがあるから、犬は何匹まで飼ってよい、ネコは何匹
まで飼ってよいと決められているけれど、ハイデさんはここの住人のペットを
旅行や自分の病気で面倒を見れないのを代わりに見てくれているんだ。
うちだって、クリスマスの後からニューイヤー過ぎまで、マミーとダデイは二
人で10日間くらい、ラスベガスに行ってしまうけれど、その時も、ハイデさ
んが一日3回来てくれて、僕たちにごはんを作ってくれたり、散歩に連れて行
ってくれたりするんだよ。
ハイデさんの家にボーデングする子達だっている。それなのに、家の窓からこ
っそり覗いて、何匹中にいるのか数えてリポートするなんて、きっと、そのお
バーさんは心の病に掛かっているのかもしれないね。

ハイデさんはマリエッタさんのシェルターにも沢山のお金を寄付したり、病気
でもう駄目だという犬やネコを引き取って面倒を見たりしているんだそうだ。
本当に二人とも動物が大好きなんだ。

すると、マリエッタさんは
「ねえ、貴女もボランテアにならない?週に何時間でも良いのよ。犬達を散歩
させたり、面倒を見てあげて欲しいの。今度、私と一緒にシェルターに見学に
行きましょうよ。きっと、気に入るわよ」
とマミーに言った。
マミーは心の中で、これは不味い事になったぞ、と困ってしまった。
それは、もし、病気や可哀想な犬を見たら、絶対に引き取りたくなってしまう
事、そうすると、僕とチチは嫌がるだろう、それに、きっと、可愛そうな犬達
を目の前にしたら、ヒーヒー泣いてしまいそうな事。冷静ではいられないだろ
うなあと自分で予測がついてしまう事なんだ。困ったぞ。困ったぞ。シェルタ
ー仲間に引きずり込まれるかも知れない。
マミーは本当に困ってしまったんだ。
                                       
つづく(次号掲載は11月08日を予定しています)