その59.                                       
これは、警察犬のエディのお話しだよ。
スタンダードシュナウザーのエディは若い頃は爆弾発見犬として大活躍してい
たけれど、段々年取って来たので、警察の中でも、もう少し、楽な仕事をする
ようになっていたんだ。
ハンドラーのピッケルさんと長い間のコンビだ。
ピッケルさんはエディの能力を本当に信頼していたんだよ。

ある日、ピッケルさんの同僚のジョージさんは定期的な検診で腕にほくろが出
来ているのを見つけられたんだ。
検査の結果はネガテブ。でも、冗談でピッケルさんの所に来て、エディに自分
の体の臭いを嗅がせたんだ。
ジョージさんはエディが爆弾犬だったからとほんの冗談だったんだ。

エディはクンクンとジョージさんの体を嗅ぎまわると、ピタッとその腕に出来
たホクロの所で停まり、ジーと見ると、いつも爆弾を発見した時と同じように
咆えたんだ。
ピッケルさんは警察犬のハンドラーを30年も続けている大ベテランだ。
エディはそのホクロが悪いと察知したのだからと、ジョージさんにもう一回の
検査を勧めた。
前回の検査ではネガテブだったのでジョージさんも半信半疑だったけれど、他
の皮膚科のスペシャリストの所に行って、もっと詳しい検査をしてもらったん
だ。
すると、結果は陽性。メラノーマ、皮膚がんだった。

お医者さんは大至急の手術と治療をジョージさんにして、早期発見でジョージ
さんは助かった。

ジョージさんはエディの臭覚の御蔭で、科学的には発見できなかった皮膚がん
を発見できたと感謝したし、ピッケルさんもエディを全面的に信頼した事がジ
ョージさんの命を救ったんだと信じている。

ところで、マミーとダデイがデスカバリーチャンネルというテレビの番組を見
ていた。
モチロン、僕もチチも一緒にね。
その番組は、どの動物が頭が良いか?という番組でベスト10をつけていた。
1位、2位はチンパンジーとかゴリラとか人間に近いお猿たちだったよ。その
後は、イルカとか鯨とかが続いて、僕たちは7位、6位はブタちゃんだった。
マミーもダデイも「そんなバカなー」って大騒ぎだ。
僕たちより、ブタちゃんの方が頭がいいんだって。
絶対におかしいよね。
マミーは「介護ブタとか盲導ブタなんて聞いたことがない。絶対に犬のほうが
賢い」
と言った。絶対に、僕たちのほうが賢いよね。            
番組の中でお喋りする鳥も出て来て、人間が言う事をリピート出来る。
九官鳥とかオウムとか言うんだ。この鳥たちはランクが僕たち犬より上だった。
おしゃべり出来るからだって。人間で言うと三歳位の知能があって、訓練する
と、おしゃべりや芸当が出来るんだって。
でも、可愛がった後に、無視したり放置されると、頭がおかしくなってしまう
とも言っていたよ。
これは、この鳥だけじゃない。僕たちだって、散々可愛がられて愛情を与えて
くれたのに、人間の気まぐれで、捨てられたり、苛めたれたり、無視されたら、
心も傷つくし、頭だっておかしくなるんだよ。人間と同じなんだよ。
                                          
つづく(次号掲載は11月29日を予定しています