その60.

この話はキーウィーっていう介護犬の話だ。
キーウィーは訓練された介護サービス犬だ。
キーウィーは複合硬化症という難病のリサさんのヘルプをしている。
リサさんは車椅子の生活であまり外には出ないけれど、調子の良い時は家の事
もキーウィーに助けてもらって出来る。
洗濯をして乾燥した後は、衣類はキーウィーが一枚一枚ドライヤーから引っ張
り出してリサさんに渡すし、誰か玄関に来たら、キーウィーが応対する。
リサさんが新聞持ってきてといえば、新聞を、電話といえば電話、薬といえば
薬ををリサさんの所に運んでくるんだよ。
そんなある日、リサさんは洗面所のパイプが詰まっている事に気が付いて、パ
イプクリーナーで掃除しようと思ったんだ。
でも、そのクリーナーは前には使った事のない初めてのものだった。
ランドリールームでそのボトルをオープンすると、すぐにヒドイアレルギーの
症状がリサさんを襲い、発作を起してしまったんだよ。
そのまま、リサさんは車椅子から転げ落ちて、クリーナーを頭から被ってしま
い、殆ど意識がなくなりそうになってしまった。
クリーナーの薬品は猛毒なんだ。
あっという間にリサさんの顔や手や体はヤケドしてしまった。
キーウィーに「電話」というコマンドを出して、ワイアレスの電話を持ってこ
させて、911を自分でして助けを求めたんだ。
でも、リサさんの発作は益々ひどくなってきた。このままでは、救急車が到着
する前に、リサさんは死んじゃうかも知れなかった。
キーウィーは大変な事が起きてしまい、どうしたら良いのか考えたんだ。
とにかく、この毒からリサさんを助けよう。
キーウィーはリサさんの後ろに廻って、シャツをくわえて、思い切り引っ張っ
た。
リサさんは体重が80K位あって中々動かせないんだ。
でも、キーウィーはクリーナーの毒で鼻も足も焼けただれてしまっても、一生
懸命リサさんを引っ張って、となりの部屋まで引きずって来たんだ。

それから直ぐに救急車が到着して救急隊員の人がリサさんに話したんだけど、
もし、あのまま、ケミカルな猛毒の中に倒れていたら、絶対に助からなかった
んだって。
勇敢だよね、キーウィー。
                                          
つづく(次号掲載は12月6日を予定しています