その83.

今日は、バーバのその後のお話だ。
ある日、シェリルさんから電話があって、留守番電話にメッセージが入ってい
た。
「今度の金曜日、女だけのエステ パーテイがあるので、ぜひ、サラ、来てく
ださい。招待状は後ほど送るけれど、時間を明けておいてね。それから、バー
バは色々あって、もう、うちの子でなくなりました。」

マミーは、アレ、何か変な言い回しだなあ、これは、バーバに何かあったに違
いないとピンと来た。
4時になって、「タマちゃん、マーレンのお家に行こうか?もう、バーバは居
ないんだってさ」
僕は、やっぱり、僕の御願いが神様に伝わったんだと思ったよ。
バーバさえ居なければ、僕もチチもマーレンとまた遊べるようになるんだもの。
OK,OK、僕は、行きたい、行きたいとドアの前をウロウロしながら、すぐ
にでも出掛ける準備をした。
お散歩がてらだから、マーレンの家につくまで、チチとあちこちにシーシーを
引っ掛けて歩いて行くと、マーレンの家のガレージが開いていて、ビルさんが
何かしていたよ。
「ハーイ、ビル!シェリルはいる?」
「今、マッサージに行っていて、もう直ぐ帰って来ると思うけどね」
「メッセージを貰ったんだけど、バーバはどうかしたの?」
とマミーはさっそく、ビルさんにたずねた。

「いやー、バーバね、シェリルから聞いたと思うけれど、僕たちはアラスカに
クールージングのバケーションに12日間行っていたんだ。その間、マーレン
は近所のウエステンを飼っている人の家にボーデングして、凄く、ハッピーだ
った。
その間、バーバはシェリルの元同僚のヘレンの家でトライアルを兼ねて、預か
ってもらう事になっていたんだ。バーバはあの性格だろ、他の犬との協調性が
ないから、マーレンと一緒は無理だからね。ヘレンはやっぱり、ウェステイン
を飼っていたけれど、最近、病気で亡くしてしまい、また、ウエステンが欲し
いと捜していたので、もし、バーバと相性が良ければ、永久的にヘレンの家の
子になるはずだったんだよ。所がサ、僕たちがバケーションから帰って見ると、
留守番電話にヘレンからメッセージが入っていて、バーバは引き取れないので、
バーリントンの動物病院に入れたから、僕たちに引き取りに行って欲しいって
いうんだ、
ビックリしたよ。
また、バーバが何か事件を起こしたのか!ってね。すぐに、ヘレンに電話を掛
けると、ヘレンはお母さんと二人暮しなんだけれど、お母さんは脳溢血を何年
前かに起して、その後遺症で、よく、色々な事が混濁して判らなくなってしま
うそうなんだ。
それで、バーバの事を元飼っていたウエステンだと思い込んでしまい抱きしめ
ようとしたら、お母さんの顔をスナップしたらしい。その時は、擦り傷程度だ
ったんだけれど、一日、お母さんとバーバが二人きりの日があって、ヘレンが
家に帰ると、今度ははっきりとお母さんの顔にバーバの歯型がついていて、本
当に噛み付いてしまったらしい、これで、二回目だ。
ヘレンもお母さんとバーバを二人きりには危なくて出来ないと判断して、すぐ
に動物病院に入れたというんだ。
こちらも、もう、バーバは引き取れない。
実はね、マーレンがバーバに凄く悪い影響を受けて、随分悪い子になってしま
ったし、バーバに苛められて、いじけてしまったんだよ。それに、バーバの御
蔭で、マーレンは友達とは一切遊べなくなり、バーバは近所の犬達の鼻つまみ
だ。
それで、僕たちがバーバを引き取ったウェステンを助ける会に戻せば、噛み癖
があると言う事ですぐに薬殺だっていうんだよ。シェリルがバーバが可哀想だ
と言うのだけれど、僕らもバーバには4回チャンスを与えたんだ。
一回目はウェステンを助ける会から引き取った時。あの時、本当はバーバはも
う、眠らされる寸前だった。
二回目は交通事故。覚えてるだろ、冬に雪の中に飛び出して行って、車の下敷
きになった事。
三回目は友人の顔を噛み付いて鼻の下から唇にかけて、10針を縫う怪我をさ
せた時。
そして、今回のヘレンの家の件だ。マーレンが淋しいだろうと兄弟を持たせて
上げようと思ったけれど、バーバにはお手上げさ。引き取ってから4千ドル位、
バーバに使ったからね。でも、薬殺は可哀想だ。こんなバーバになってしまっ
たのも、僕らの所に来る前に虐待されたかも知れないし、あちらこちらとタラ
イ回しにされていた時に、何かあったのかも知れない。本当に悪い子だとは思
えないんだ。
そこで、バーリントンヒルズにあるシェルターを見つけて、ここは、絶対に殺
さない。
ちゃんとトレーニングもして貰い手がつくまで、永遠にシェルターに居られる
という特別な所なんだ。という訳で、バーバは前科二犯でまた、鑑別所暮らし
だ。
よく、お努めして更生出きれば、また、良い飼い主の所に貰って貰えるかも知
れないからね」
僕は、ビルさんの話を聞きながら、何度チャンスを与えられても、自分でみん
なブチ壊して、回りに迷惑を掛けて行くと言うのは、破滅型だ、それと、きっ
と、バーバは生まれながらに頭が悪いんじゃないかと思ってしまったよ。
でも、会う毎に、マーレンがイキイキと元気になって、ハッピーなので、僕も
嬉しい。
バーバがこれから、更生して幸せになってくれる事を神様に御願いしようっと。

つづく(次号掲載は7月18日を予定しています)