その97.
日曜日の朝は、5時半に家を出て、森とビッグフィールドでハンテイングして帰ってく
るのは大体9時なんだ。
ダデイは、雪が降ろうがブリザードだろうが、大雨だろうが、毎週末、ちゃんと時間道
理に、連れて行ってくれる。
帰ってから、ダデイとマミーは日曜日の新聞を片手にコーヒーを飲むんだよ。
その朝は、マミーはセールの広告をしらみつぶしに調べて、ダデイは何か面白い記事が
ないかと、探していた。
「おいおい、これを見てごらんよ!これから、インターネットで調べてみようよ」
と言い出した。
その記事は、デビンさんの犬はグレイハウンドで、プレミアムドッグフードを食べ、沢
山のエクササイズを毎日欠かさずして、獣医さんの所に定期的にチェックアップに連れ
て行ってもらい、歯石も取って、歯のクリーニングもして健康管理は万全にしてもらっ
ている。デビンさんは物凄いお金をこの飼い犬に掛けているんだって。
ところが、近所の犬は、デブで口が臭くて、飼い主の食べ残したものを食べて、散歩に
も連れて行ってもらえず、家の周りをウロウロしているだけなんだって。
飼い主はもし、何かあっても、お金がないから、獣医さんのところには、連れて行けな
いと言っていて、全く、チェックアップをしていない。
この二匹の犬が同じ10歳で、それでは、人間の年齢にしたら、70歳?本当?という
記事だったんだ。
www.DogAge.com.というインターネットのサイトでテストが出来ると書いてあったの
で、マミーとダデイは早速、やってみる事にしたんだよ。
このテストはドクター クリスチャンという先生が製作したものなんだけれど、ドクタ
ーは、アメリカの40%の犬は肥満で運動不足だと言っている。
まるで、人間と同じだ。だって、僕のご近所のおじさん、おばさんたちはマミーやダデ
イの2倍位大きい人たちが沢山居て、マミーは肥満だ!といつも、言っている。
食べすぎなんだって。だから、犬たちも食べすぎで肥満になっちゃうんだって。
そこで、マミーたちがコンピューターの前に座って、このサイトにアクセスして、僕と
チチのテストをしたんだよ。
まず、僕のほうは、犬年齢は11歳だけど、人間の年なら、70歳以上って計算される
はずだけれど、なんと、44.6歳で、普通の同じ年の犬たちよりも19.1歳も若い
と出たんだ。僕は、驚異的に、これ以上若さを望めないほど、若いんだってさー。
僕のことを「素晴らしい飼い主に恵まれて、ラッキーな犬だ」って結果が出たんだよ。
マミーもダデイもキャーキャー言って、大喜びだ。
次に、チチのテストをやってみた。
チチは犬年齢は10歳だけれど、人間の年齢で言うと60歳位と計算されるんだけれど、
なんと、39.3歳で普通の同じ年の犬たちよりも、16.8歳も若いと出て、やっぱ
り、驚異的に、これ以上望めないほど、若いと出たんだ。
マミーはいつも、「こんなに毎日、毎日朝は1時間以上好き勝手に森をハンテイングし
て駆け回り、土日は朝、4時間も森とフィールドに連れて行ってもらう犬なんて、どこ
にもいない。幸せだと、思えー」と口癖のように、僕たちにお説教するんだ。
このところ、悲しい話が多かったので、少し、安心したらしい。
だって、僕のいとこ、つまり、ダデイの弟のデックさんの犬のダステイが脳腫瘍に掛か
ってしまったらしいんだ。
ダステイは6歳でワイマーハイマーというドイツの純血種でシルバーグレーの犬だよ。
僕たちがアメリカに来たときに、丁度、貰われて来たばかりで、子犬だったのに、その
時、すでにチチの2倍位大きかったんだ。
でも、ちょっと、頭が弱くて、ダデイは「ダステイは馬鹿だけれど、いい奴」と呼んで
いた。すぐに、チチの事が大好きになって、子分になり、チチの後をついて回っていた
んだよ。
デイックさんの話によると、急に夜中に発作を起こして、目が真っ白になって、痙攣し
たんだって。
すぐに、救急病院に連れて行ったら、脳の病気の疑いがあるから、脳神経の専門の獣医
さんの所に行くようにと、紹介されて、そのまま、2時間も掛かってその獣医さんの所
に行ったんだ。
所が、その脳神経専門の先生は「脳腫瘍の疑いがあるけれど、脳炎かもしれないので、
検査をしますが、その検査代が2500ドル掛かります」と言った。
デイックさんと奥さんはビックリして「検査はしなくていいです」と断った。
もし、手術という事になったら、7000ドル以上掛かるし、とても、払いきれないと
思ったからなんだ。
それに、手術して、ダステイが凄く苦しかったり、痛かったりするのも、可哀想だから、
様子を見て、本当に駄目なら、苦しまないうちに眠らせようと決めたんだ。
僕とチチはお別れになるかもしれないから、ダステイに会いに行ったんだよ。
ダステイは痩せてアバラ骨がでてしまっていたよ。
頭をかしげて、重いのか、首がおかしくなってしまっているのか、変な格好だ。
片一方の目が見えないみたいだし、背骨もちょっと、S字にくねっているようなんだ。
デイックさんは発作を起こしたときよりはずっと、良くなったと言っていたけれど、久
しぶりに会ったダステイは本当に病気だった。
僕もチチももしかしたら、もう、二度とダステイとは会えないかもしれない、と言う予
感がしたんだよ。もう、さよならをしなければならない時が近づいているんだと、感じ
たんだ。別れ際に、僕たちの車のところまで、ダステイはやってきて、悲しい目で、ま
た、遊びに来てね、って、サインを送ってきた。僕はがんばれよ、また、会いに来るか
らね、とダステイにサインを送った。本当に、また、会えるのかなあ。ダステイ。
つづき
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