その55.

今年のガーデンウォークの日はマミーはちゃんとお客さんたちの接待をしよう
と決めていた。去年はダディの友達の娘さんをショッピングに連れて行って、
家にはいなかったんだ。だから、今年は、レモネードスタンドも作って、お庭
を訪ねてきてくれたお客さんに大サービスをしたんだ。

その中に写真家のマリアッテさんがいた。
マミーのアートクラブの発起時の会員だった人だ。
今は、写真クラブを作って、写真家だけで集まっているみたいだ。
ドイツ人だけど、とっても魅力的な人で1年以上、マミーと話していなかった
ので、二人で久しぶりねえ、なんて盛り上がっていたんだよ。

マリアッテさんはマミーのお庭の写真を撮りに来たけれど、僕とチチの写真も
撮ってくれた。僕たちは、お花の前で、ポーズした。

それから、何日かして、マミーとお買い物から帰ってくると、ドアーの前に大
きな封筒が置いてあった。マミーはさっそく、その封筒を開けると、その中に
は、大きな写真が2枚入っていたんだよ。
それは、マリアッテさんが撮ってくれた僕とチチの写真だった。
一枚は僕が詰まんないよーって大あくびした写真だ。
マミーは、今までで、一番いい写真だ、さすがにプロが撮る写真は違うなーと
感心した。それに、黙って写真を置いて帰ったマリアッテさんの気持ちも嬉し
くなって、何かお礼のプレゼントをしようと思ったんだよ。

そういえば、マリアッテさんはネコが好きだといっていたと思い出し、地下室
に山の様に用意してあるプレゼントの中から、3年前に北京で買ったネコの墨
絵を見つけ出し、これがいいと、決めたんだ。

さっそく、マリエッタさんに電話を掛けて、
「これから、プレゼントを届けに行きます」
と押しかけて行ったんだよ。
マリエッタさんはマミーが写真のお礼に持って行った墨絵がとっても気に入っ
て、お茶を出してくれた。マミーはすぐ帰るつもりだったのに、ズルズルとい
つもの様に、お喋りを始めたんだ。

マリエッタさんは3匹のネコを飼っている。
全部黒と白のネコで、その墨絵のネコは、まるで、マリエッタさんのネコを描
いたようだったんだ。

ネコたちがどうしてマリエッタさんの子供達になったか、話してくれたんだよ

1匹目はマリエッタさんがボランテアで手伝っている動物シェルターでから引
き取ったネコ。
2匹目はある娘さんが家の外で泣き声がするので見ると、子猫を産んだばかり
のネコがヒーヒーと泣いていたんだって。どうも、車の窓から捨てられたらし
く、怪我もしていたんだ。その娘さんはすぐに、そのネコを助けたんだけれど、
大学に戻らなくてはならなくて、誰かそのネコを引き取ってくれる人を探して
欲しいとシェルターに連れて来たんだ。ところが、そのネコはどこにでも、オ
シッコを垂れ流してしまって、シェルターでも困ってしまい、引き取り手が数
日の間に出て来なければ、眠らすしかないという所まで来てしまった。それは、
ネコのオシッコは凄く臭くて、色々な動物が一緒のシェルターにいるので、オ
シッコの垂れ流しは凄く困る事なんだって。
マリエッタさんはもしかすると、そのネコは健康に問題があるんじゃないかと
自分の知り合いの獣医さんの所に連れて行って、検査をしたんだ。
そうしたら、お産の後、お腹の中に黴菌が入ってしまって、腎臓が1つ、駄目
になってしまっていたんだ。だから、オシッコの垂れ流しをしてしまっていた
んだよ。
マリエッタさんはそのネコを助ける為に病院代も治療費も全部出して、自分の
所で引き取る事にした。
3匹目はまだ、子猫だ。この子猫も、時速80K位で走る車の窓からポィ、と
外に捨てられたんだ。、それを後ろの車に乗っていた人が見ていて、すぐに車
を停めて、その辺を探したけれど、森林保護区の一部だったので植物が沢山生
えていて、見つけられなかった。そこで、すぐに警察に届けて、保護区レンジ
ャーの人達が1週間掛かって、その子猫を森から探し出して、シェルターに連
れて来たんだって。
でも、僕はネコは嫌いだけど、子猫や子犬を走る車の窓から捨てるなんて、残
酷な事をする人間がいるんだね。

マリエッタさんはまたまた、可哀想な子猫を放って置けなくて、引き取り、結
局3匹になったんだそうだ。
でも、子猫はまだ来たばかりで名前がついていなかった。
マミーは、僕とチチの名前の意味と由来について説明して、「タマ」というの
はボールが1つという意味だけれど、日本ではネコのトラデッショナルな名前
だし、チチはおっぱいと言う意味だけれど、可愛いんだ、それにハワイの友達
はネコの名前を「スモウ」ってつけたとか、日本語の名前はどうかと話したんだ
よ。
そうしたら、マリエッタさんも旦那さんも「タマ」と言う名前がすごーく気に
入ってしまって、その3番目の子猫の名前は「タマ」に決定したんだ。
これから、ご近所の犬猫にタマだのポチだのって増えるかも知れないよ。

                    
つづく(次号掲載は11月01日を予定しています)