その71.
ある日曜日の事だ。ダデイもマミーも僕たちもゴロゴロと朝からしていると電 話があった。 マーレンのマミーのシェリルさんからだ。 「ハーィ、お久しぶりね。実はビルの弟から庭で出来たレモンとオレンジとグ レープフルーツが届いたの。お宅は、かんきつ類食べる?」 「もちろーん。食べるわよ」 「じゃ、これから届けてあげるわ」 マミーは電話を切った途端に、 「マーレンのマミーが来るよ」と僕とチチに言った。 えー、マーレンも来るのかなあ。わーい、嬉しいなあ。と僕たちはドアの前と 窓と行ったり来たりしてシェリルさんが来るのを、今か今か、と待っていたん だ。 10分くらいして、シェリルさんが大きな袋をぶら下げて訪ねて来たよ。 マミーがドアを開けてくれたので、思わず、シェリルさんに飛びついて、会え てうれしい、うれしいってキスキス攻撃をしたんだ。 あれ、マーレンはどこ? 僕とチチはお庭の木戸まで走って捜したけれど、マ ーレンは居なかった。 「マーレンはお留守番なの。バーバがいるでしょ」 シェリルさんの持って来てくれたレモンはサイズがりんご位の大きさでダディ もマミーもビックリしていた。初めて見たでっかいレモンだったんだ。 「どうなの、お宅のヤンチャバーバは?」 「それがねえ、マーレンとは仲良くやっているんだけど、他の犬達とは全然駄 目なのよ」 「私が午後の散歩で貴女の家の前を通ると、窓の所でバーバとマーレンがこち らを見ているの。だけど、バーバはガリガリと窓をかきむしりながら、ガオガ オ凄い勢いで、咆えていて、その隣りでマーレンが済まなそうな顔して、耳が たれて、ごめんなさい、僕のブラザーがうるさくて、って顔しているのいるの よね」 「バーバが近所の人を噛んじゃった話をしたわよね。あれもね、車の下に巻き 込まれた2日後。近所の人たちがサンクスギビングのデイナーに来ていた時な のよ。みんなには、抱いちゃ駄目、ハグしないでと言っておいたのに、抱いち ゃった人がいて、顔を近づけて、いい子ねーとやった所を噛み付いちゃったの。 鼻の下から唇にかけて、二本裂けて、10針縫ったの。彼女のボーイフレンド がバーバを殺してやるーって大騒ぎになるし、今、整形のお医者に掛かってい るの。若い人で、顔だから、大変なのよ。一応、彼女はハグしないでと私が言 ったのにハグした自分が悪いとは言っているけれど、これからどうなるか判ら ないわ。サンクスギビングの夜から3日間くらい、大変だったわよ。ビルが彼 女とボーイフレンドを病院に連れて行ったり。それで、バーバをアダプトした シェルターに電話したら、人を噛んだら、引き取れない。直ぐに薬殺ですって 言われたの。 ビルとも、返せばすぐに薬殺されてしまう、戻す訳には行かないから、もう一 回チャンスを与えようと決めたの。もし、もう一度、誰かを噛んだらバーバは お終いなのよ。もう、検疫所に2週間入って前科者になったので、これが最後 のチャンスなの。そうしたらね、まー、バーバの態度がガラっと変って、いい 子になってしまってね。ちゃんと、判っているのよね。私とビルが話し合って いた事が自分の事だって。本当に、クロスフィンガーだわ。このまま、問題を 起したり、人を噛んだりしないように祈るだけよ。今度、マーレンだけを連れ てくるわね。 バーバは物凄いヤキモチ焼きだし、ここのゴルフコースだったら、うちから見 えないから、バーバに判らずにマーレンとタマタマとチチが思う存分遊べるで しょ。 あー、そうそう、ここのゴルフコースにコヨーテが2匹出た話聞いた?全部で 4匹位いるらしいんだけど、何人かの住人が犬の散歩中に遭遇したんですって。 ハウリングも聞いた人もいるし。タマタマは大丈夫だろうけれど、マーレンや バーバはコヨーテのディナーになっちゃうわ。一度、夜の散歩の時にバーバが 物凄く怯えて、早く帰ろう、帰ろうとしたの。もしかすると、コヨーテが近く まで来ていたのかも知れないわ」 とシェリルさんは言って、帰って行ったよ。 何だか、大変なんだなあ。だから、マーレンと僕たちは遊べなくなっていたん だね。 その日は、今度はドッグシッターのハイデさんも訪ねた来た。 「ねえ、お宅、タマゴ食べる?」 ハイデさんの手には袋に入ったたくさんのタマゴがぶる下がっていたんだ。 「もちろん、大好きよ」 「このタマゴはね、私が預かっているメンドリが庭で生み落とした凄くフレッ シュなタマゴなの。良くお水で洗ってから食べてね」 ハイデさんは犬猫だけじゃなくて、メンドリまで面倒を見ていたんだ。 その日曜日は美味しいもののもらい物の多い一日だったんだよ。 良いお友達が沢山いるのは幸せだなーとかみ締めるマミーだったのだ。 つづく(次号掲載は4月18日を予定しています) |