その87.
  
トニーさんとキムさんの若夫婦に待望の赤ちゃんが生まれる事になった。
でも、心配事が1つある。
それは、もう、何年も前から飼っているサミーというオスのネコの事だった。
ネコはよく、赤ちゃんに嫉妬して、呼吸を止めたり、ミルクの匂いのする赤ち
ゃんに噛み付いて殺してしまったりという話があるからだ。
若夫婦は赤ちゃんの為に、ベビーベッドを買ったり、ベビールームを作ったり
していたけれど、サミーはどういう訳か、ベビーモニターに異常に興味を示し
て、キッチンに置いてある、ベビーモニターの側で昼寝もするようになったん
だ。

それから、8日後。
キムさんは女の子の赤ちゃんを産んで、病院から帰って来た。
ちゃんと、サミーにも、これがベビーケイシーよ、と挨拶もした。
サミーはベビーの匂いをかいで、新しい家族がこのベビーだと判ったようだっ
た。
でも、キムさんは産後でとても疲れていて、休みたかったんだ。
ベビーに昼寝をさせようと、ベビーベッドに寝かせると、サミーが部屋に入っ
て来た。
キムさんはサミーがイタズラするのではないかと、「サミー、出て行きなさ
い」と追い出したんだ。

キムさんはキッチンに行って、コーヒーを入れようとして、モニターをカウン
ターの上に置いたんだ。
サミーは、モニターの前に座って、じっと、モニターを見ている。
もちろん、モニターからは何も聞えて来ない。
キムさんはすっかり、疲れていたので、ソファーに座って、コーヒーを飲んで、
一休みしていたんだ。

サミーは、何を思ったのか、カウンターを降りると、二階のベビールームに行
って、ベビーのチェックに行った。
サミーは、ベビーの様子がおかしい事に気がついたんだよ。
キッチンに戻って、ミャーミャーと鳴きながら、体を擦り付けて、何とかキム
さんに知らせようとしたんだ。でも、キムさんは疲れていたし、一体、サミー
が何をしているのかも、さっぱり判らない。
その内に、今度は、キッチンカウンターの上のベビーモニターから「ミャー。
ミャー」とサミーの鳴き声がしてきたので、キムさんは
「全く、サミーの奴。ベビーを起したのだったら、許さないわよ!」と怒って、
二階のベビールームに駆け上がって行ったんだ。
すると、ベッドで寝ているベビーは凄い高熱を出していて、息も絶え絶えだっ
たんだ。
「きゃー、大変!トニー、ベビーが、ベビーが大変!」と叫ぶと、二人ですぐ
に、救急病院に駆け込んだんだ。
検査の結果、何かのバイオレスに冒されてれていて、放って置けば、死んでし
まう所だったんだ。
結局、3日間入院する事になった。

それからも、サミーはベビーケイシーの守り神のように、耳の炎症や何か問題
があると、センサーでお医者さんよりも先に、異常を見つけてくれるようにな
り、サミーとケイシーは兄弟のように育ったんだって。


つづく(次号掲載は8月15日を予定しています)